12/04 コレクター

クルーズ誌掲載後、その道の客船モノのコレクターの方がお見えになる。オーシャンノートは切った貼ったで大変な付加価値を創出されている骨董屋さんとは違い、集めて大事に仕舞っておくものではなく、あくまで使っていただける、飾っていただけるものを売ることを旨としており、そう言った”コレクター”の方々のご期待にそえるものとも思わないのだが、いらした皆さん結構な買い物をしてくださるので、お陰さまですっかり在庫も目減りしてしまった。(実店舗でしか出していないキュナードコレクションなどだ)それにしても大変お詳しい方が世の中にはおられるものと感心するばかりだが、少々物思い模様になるのを否めない。

かつて従事した家具業界の話もたまに書かせていただいており、その中で、世界で2番目と言われる椅子のコレクター、福岡の永井敬二さんの話も数回ここに書かせていただいている。日本で椅子のコレクターといえば、北海道東海大教授の織田憲嗣さん、そして永井さんが良く知られている。何せ、このお二人がいるので、それを見ていて椅子のコレクションを諦めたという人を僕は何人も知っている。織田さんのコレクションは新宿のOZONEの展覧会などでも良く見ることができるし、織田さん自身これを秘蔵にするでもなく、元武蔵野美術大の島崎信先生とタッグを組んで椅子の博物館を作りたいとおっしゃっていた。このところ島崎さんは、函覆┐ぁ吠幻砲ら”美しい椅子”というシリーズモノの本を出されており随分、俗っぽい本を出されるなあ・・・と思っていたら、いつか銀座の個展にお邪魔したら、「あれは織田さんと博物館を作る資金稼ぎだよ」と笑っておっしゃっていた。片や、永井さんのコレクションとなると・・・その全貌をを見た人は居ないと言われる。ちなみに、世界一の椅子コレクターはスイスVitraのロルフ・フェルバム会長(フェルバムさんはおもちゃも好きで、キディランドで超合金モノを沢山買ってこられて、僕はそいつを郵便局まで発送しにいったこともあった)で、こちらは事業で儲けたお金で、フランク・ゲーリーに設計してもらった美術館を自社の工場に作ってしまった。で、永井さんにいつだったか、失礼とは思ったが「永井さんのコレクションは永井さんが亡くなったらどうされるんですか?」とお尋ねしたことがある。「しぇからしか」といわれてしまった。(笑)そう、永井さんは椅子が好きで仕方なくて、別に誰に見せるわけでもなく、まして自慢するわけもなくお一人で秘蔵されている。今、東京のイタリア文化会館でエンツォ・マリの展覧会をやっているそうだが、本当に珍しく永井さんがご自分のコレクションを貸し出されている。初めてではなかろうか?コレクションはその人が好きで集め、好きで対価を払ったものであり、これを他人がどうのこうの言う筋ではないが考えさせられるのが、このコレクションというものだ。

そんなことを思い出していたら、先日見えた客船コレクターのお客様から聞くには、なんでも鑑定団の船グッズの鑑定士、大阪のクドーズマリーンの工藤益男さんは船から手を引くのだとか・・・何でも元々タイプライターや電話機などがご専門で、残念ながら日本では船キチの絶対数が少なく商売にならないのだとか・・・骨董には仕事上の縁がないので他人事といえば他人事ながら残念ではある。ところが、残念がもうひとつ。平塚にお住まいの府川義辰さんが、少しづつコレクションを処分されているのだ。実はオーシャンノートの仕事の構想を練っている際にも、府川さんが毎年開催される平塚の郵便局での客船ポスター展にお邪魔したことがあり、随分とエネルギーをいただいたものだった。府川さんからはお手紙を頂戴し、以来、年賀状も欠かさず頂戴しており、いつかコレクションを全部拝見したいものと思っていただけに残念だ。売却処分だけではなく、大学などにも寄贈されているようなので、いつか目に触れることもあろうかと思うが・・・外国では、そこそこの知見をお持ちの方が旅立たれると、残されたものはきちんとした古書店を呼ぶという。古書店主は、それがなるべく散逸しないように新たな持ち主を探すという。例えば、世界的な料理書のコレクションをお持ちだった辻静雄さんのコレクションは、そうして集められたものだそうだ。法外な価値が飛び交うことには否定的だが、何もかもひとつ間違えばゴミになってしまう危うさを感じずにおられない。僕の懐に唸るほどのお金があればなあ・・・(2008,12,4)

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