02/09 ビンテージアド・府川氏の展覧会

ヴィンテージアドポスター:店長日記の写真:ポスター販売・Ocean-Note

凝り性の僕である。どこまでがビジネスか趣味か自分でもわからなくなる事もままある。このところ、古い雑誌広告を集めている。オーシャンノートをどんな風に育ててゆきたいかについては折りあるごとにここでも書いてはいるが、ひとつの理想は海事博物館があって、そこにミュージアムショップがくっついているイメージだ。博物館構想ではやはり同じ考えをお持ちの方もいて、ネルソンズバーのオーナー斎藤さんが実現に手をお掛けになっている。しかしながら、”集める”という作業は、育ちが良くないと出来るものじゃあなく(笑)、皆が欲しがるモノは市場原理で高価だから僕には手が出ないし、皆が欲しがるものを買って後生大事に押入れの奥に仕舞っておいて自慢しようとも思わない。飾ってなんぼ、見て何ぼ、見せてなんぼである。ここに、ピタッとはまったのが雑誌広告である。

何せ60年から80年も前の雑誌広告そのものである。初めて手にしたときは、少々手が震えたものだ。もちろん、オーシャンノートのテーマは海だから、何でもありというわけではなく、現在は客船の広告を中心に集めている。雑誌広告の切り抜きと一言で言うが、今はまだその価値は知れている。1950年代以降のモノは雑誌発行部数が多いので結構出回る。しかし、大戦前のものはグッと数が減る。20年代になると本当に少ない。雑誌というメディア自体がまだ育っていないし、例えばポスターというメディアは19世紀後半にはフランスのロートレックらの活躍で育っていたのに比べれば、その有用性が認められ広まるのは印刷技術も発展してきた1930年代以降なのだ。これに客船というテーマを重ね合わせると、言えばタイタニック(1912年)の雑誌広告ははなっから存在していないし、1950年代以降はモータリゼーションと航空機の時代だから、自動車や航空会社の雑誌広告はやたらと数が多いけれど、30年代から60年代まで通期で、客船の雑誌広告は総量にして概ね自動車の20分の1、航空会社の10分の1くらいなものと思う。”貴重”と大げさに言うほどではないにせいよ、ゴロゴロしているものではなく、まして総量が限られているから、その一枚を二度と手に出来るかどうかは難しい。アメリカ、英国、フランスあたりでの相場は、名のある船のもので、5ドルから高いのは40ドルを超える。雑誌の切り抜きが高価ではないながら”商品”のように扱われ始めたのは、アメリカでもこの10年くらいのものだ。先行きはわかるものでもないが、今なら比較的手に入りやすいのも事実だ。それでもヴィトンだとかティファニーのものは既に結構な値がつき始めているから、それがどの分野であれ、興味にある方は要マークと思う。ティファニーなんかの正調アールデコは見ものである。

そうやって、せっせと集めると、一枚一枚に伺い偲ばれる当時の情勢やら状況がぎっしり詰まっていて、もっと知りたい・・・という願望に駆られるから不思議だ。1937年のキュナードホワイトスターの雑誌広告に大きく写る航海士・・・名前はボックスホール、そう1912年にタイタニックから生還したボックスホール四等航海士だったりするのだ。さて、これをどうやって飾るか?裏打ちを検討するものの、保存性の問題から手軽な3Mのスプレーやペーパーセメントの使用は見送り、表具屋さんでの裏打ちは湿式なので断念、基本的に両面印刷だから裏が透ける事もありえるので、構想3ヶ月、ビンテージアドポスターシリーズのリリースに至ったのである。材料は無酸性に徹し、やはり、資料として大切にしなければならない点と、保存性、可逆性、鑑賞を極めて納得できる妥協点で商品化したつもりだ。

さて、お知らせでも案内しているが、こうした紙モノの収集家としては日本でも3本の指に入る、府川義辰さんの展覧会が恒例によって平塚の郵便局で開催中だ。(27日まで)府川さんは上述の雑誌の広告も誰も気にしていなかった50年代からしっかりと集めておられたし、その資料としての重要性は”栄光のオーシャンライナー”誌上でも資料として提供されたことからも理解できるところだ。府川さんとは数年来、不躾ながら年賀状も交わさせていただいているが、このところ、府川さんはコレクションの整理・処分をされており、僕も幾らかお譲りいただいたのだが、もしかすると・・・お話をお聞きしてはいないが、今回が最後になるかもしれない。今回の目玉はフランス、サンナザールのアトランティック造船所のクイーンメリー2のデッキプランの展示だそうである。いろいろお伺いして察するに、今後、今までと同様にコレクションに励むことはないようなので・・・幾らかお譲りいただいたこともあり、これをひとつの文化研究のあり方として、”勝手に”意志を継がせていただくつもりである。(2009,2,9)

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