01/31 クイーンメリー2の図面

クイーンメリー2一般配置図:店長日記の写真:ポスター販売・Ocean-Note

1月も終りである。明けて2月・・・19日にはクイーンメリー2、二度目の来航である。クイーンメリー2がいかなる客船であるかは昨年の店長日記に”普通の人向け講座”を書いたが、僕がクイーンメリー2にどんな思い入れを持とうとただの傍観者であることには違いなく、ただ、身辺が少し騒がしいことは否めない。冷静に考えればオーシャンライナーは(ただの客船ではなく、あくまでオーシャンライナーである)当社の重要な研究・仕事のテーマだし、最後にして現在ただ一隻のオーシャンライナーであるクイーンメリー2が来るのだから幾らか騒がしくなければ(商業上も・・・苦笑)イケナイかもしれない。今年も去年に続き、横須賀の軍港めぐり・猿島航路のトライアングル社の”クイーンメリー2追っかけクルーズ”のお客様向け記念品と抽選で差し上げる景品のご協力をさせていただいているし、丁度ドンピシャのタイミングで世にも珍しいクイーンメリー2の一般配置図を入手したので気分も盛り上がっている。

そんな気分の盛り上がりで、今年もクイーンメリー2・2010年横浜寄港記念ポストカードセット(限定品、販売終了しました)を作った。去年好評完売だった初来航版を作った後、早い時期にアイデアを思いついた”北斎の神奈川沖波裏にクイーンメリー2”をあしらうデザインが我ながら上手にできた。実は手が空いたときにやってみてはいたが、どうもクイーンメリー2の位置や大きさがしっくりこなくてずっとボツ続きだったのだが、来航が迫ってくるとアラ不思議、わりと短時間で納得のデザインができた。北斎の神奈川沖は世界的にもモナリザに次いで有名な絵とされていて、オーストラリアのサーフブランド、クィックシルバーなどもこの絵をもとにブランドマークを作っているし、世界中のフォトショップ・イラレ使いの達人達がいろんな形でトリビュートやアレンジをしているが・・・僕の”米亜利女王弐號・弐千拾年来航之図”のロケーションは、まさに原作そのものである。神奈川沖というから、誰もが現在の横浜北方のあたりのロケーションを想像するだろうが、北斎の作品は現在の本牧あたりを描いたものだ。(北斎は神奈川沖を描く30年前にはふたつほど本牧で波を描いたし、ライバルの広重も本牧で波と富士を描いている。)

さて、一般配置図である。キュナードのパンフレットを見れば、デッキプランは普通に見ることができるが・・・どういう事情で入手されたのかは知らないが、客船の紙モノのコレクションでは世界的にも知られる神奈川県在住の某氏が、クイーンメリー2の一般配置図(外国ではジェネラル・アレンジメント=G.A.という)を数枚入手された。昨年、県下某郵便局で展示されて新聞でも話題になったのだが、この日本に数枚輸入された”青焼き”の一般配置図を譲っていただいたのである。元々、そんなつもりはなかったが、大変貴重な資料であることは確かだし、たまたま上述のトライアングル社とお客様への景品の検討をしていたところにこの一般配置図が飛び込んできたので、例えば模型作りのまたとない資料など有意義な活用の一助にもなりえるし、複製できないかという話が盛り上がり、あれこれ伝手を頼って・・・さすがこのあたりが横須賀なのだが、自動車の原寸図面の出力などもやっている専門家にあたって複製を製作してもらった。何せ幅840mm、長さ2480mm、サイズにすれば2A0半(ニエーゼロハン)である、僕も若かりし頃ジアゾ青焼きや大判コピーは仕事で散々やらされた(おまけに手が足りない時は、たかが家具の配置だが図面の手直しなど自分で製図版に向かってやっていた・・・泣)ものだが、せいぜいA0までである。結果的には職人技で複製に成功はしたが、原本の”青焼き”が”本物ではない”ため、極薄いトレーシングペーパーで第二原図を起こさざるを得ず、その第二原図を元に作る”複製の青焼き”は30枚しか製作できなかった。販売用には10部のみだ。

今は昔と違って、設計製図はCADでやる。そして出力はプロッターによって通常の白色紙になされる。昔は大判PPCコピーの品質が悪かった(建築図面では起端と終端で誤差が大きくて使えないことも多かった)し、そもそもPPCが普及する以前は図面出力の手段が無いわけで、図面はトレーシングペーパーに描かれ青写真やジアゾ青焼きで出力されるのが普通だった。と、いうことは数枚だけ輸入された”青焼き”のクイーンメリー2一般配置図は何物なんだろう?と、今回の第二原図製作と複製をやってくださった専門家とも検討してみた。図面の精度から見て、どうやら造船所でプロッター出力された白図を何者かが持ち出して、その本物の白図から第二原図を製作、その第二原図を焼いたものが日本に数枚輸入された”青焼き”だとの結論を得た・・・・・・で、たまたま手持ちのクイーンメリー2映像の整理とチェックをしていたら・・・ありました、ありました!フランスで製作されたビデオ”THE NEW QUEEN OF THE SEA”は、設計者のステファン・ペインがフューチャーされた珠玉のドキュメンタリーフィルムだが、その中に”本物”の一般配置図が出てくる。上の写真だが、一枚目の折り目があるものはペイン自身が机に広げているところ、二枚目はプロッターで出力されるところだ。そして、その一般配置図は下の三枚の写真のように設計室の壁に貼られたり、打ち合わせに使用されている。普通の人には用のないものだが、複製とはいっても2A0半にも及ぶ名船の図面だ、見ているだけで何とも言えないロマンチックな気分になる。もちろん、模型作りの資料には欠かせない。一般配置図だから船体の断面形状などはわからないが、船全体の配置がわかっていないと模型は作れない。現に、現在、千葉県某所で1/200のクイーンメリー2を制作されている方がおられ、人を介して本図をお見せしたところ大変に喜ばれた。

今回の図面についてのあれこれは、長いことインテリア業界にいて、なおかつトレペに鉛筆、ジアゾ青焼き時代を経験していることが役に立った。昨晩も”ハッピーフライト”なる映画をテレビで見ていたら、ジャンボの格納庫が出てきて・・・「そうえいば、飛行機の格納庫の無柱空間の設計は梓設計の専売特許だったよなあ」とか、映画では羽田といってるが・・・「これ、関空だよなあ」とか(空港の仕事はとうとう大きな仕事が成就しなかったが、あちこちの空港を見て研究したものだ。家具が配置されていない図面でも大抵の空港の使い勝手は図面から読めた)、ギョーカイ時代の知識と経験は日々全般に根付いているものと実感する次第だ。ま、あんまり稼ぎになることではないけれど・・・ちなみにクイーンメリー2の一般配置図の複製、これまたモノの値段がわかる方ならお判りのとおり、儲けはほとんどない。泣   (2010,1,31)

Ocean-Note, Queen Mary 2 Deckplan, ALSTOM, Chantiers de l'Atlantique 2001

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