09/02 世界でひとつのtasco双眼鏡

tasco双眼鏡:店長日記の写真:ポスター販売・Ocean-Note

仕事場がオーシャンビュー(尤も・・・東京湾、浦賀水道を眺めているわけだから”オーシャン”にはあたらないかも?)というのは実に気分がイイ! 新しい事務所の環境を整えるにはあと少し時間が必要だし、家族四人の新しい生活パターンが上手く収まって慣れるまでにはまだ一工夫必要だけれど、手を止めて目をあげると浦賀水道を往くいろんな船が見える。オーシャンライナー研究専門の僕にはクルーズ船が通ってもすぐに船名が判るわけではないが徐々にその方面にも興味が向くことだろう。

そんな訳でそこに往く船、どうせなら望遠鏡で見たいのは当然で、家で埃をかぶっていたtascoの双眼鏡を持ってきた。元々tascoは米国の会社で軍用に制式採用されたりしていた名門だったが、知らぬ間に会社は無くなってしまい今は日本で作っているらしいが、かつての名声は見る影もなく落ちぶれてしまったようだ。僕が学生時代、バードウォッチングにハマっていたころ専ら愛用していたのはニコンの7x35で、視野が広く軽くて明るい(当然、色収差が少ないわけだ)素晴らしい双眼鏡だが今は8x30しか作っていないようで残念な限りだ。特に初心者で視力が良くない僕にとっては7x35はアリガタイ道具で鳥が「入らない」ことは殆ど無かった。ただこの道具には欠点があって、大変繊細にできていて雨の日や水辺で使えないことだ。雨にあてるとその後曇ってしまったりするのだ。

tascoの名を知ったのは、最初に勤めた会社、文具メーカーのプラスの時だ。プラスという会社は当時とても面白い会社で家具・文具メーカーでありながら相当な雑貨屋さん感覚が強く、何故か取扱商品にtascoの商品があったのだ。今は街の文具屋さんは廃れてしまったけれど、当時、街の文具屋さんの売場提案などをやっていた部署(昔の伊勢丹の色彩鮮やかな文具売場を憶えているだろうか?あれはプラスが提案していた売場だった)の同期のデスクにダベりに行ったりするとその辺にtascoがころがっていたりしたものだ。そのtasco、実はプラスは直接輸入していたのではなくオガタさんが輸入しているものを販売しているのを知ったのは後のこと。

オガタさんは亡くなった俳優の峰岸徹さんばりのイイ男で、当時公私ともに大変お世話になった上司のIさんから紹介された。Iさんとオガタさんは日本の輸入家具の草分けだった日本総業=モビリアの同僚だった間柄で、オガタさんのみならずモビリアOBの方々はギョーカイの方々におられて、競合会社という垣根を越えて営業ネタを教えてもらったり可愛がってもらったものだ。もし、輸入家具の営業マン時代の僕に営業スタイルなんていえるものがあるならば、それは家具の輸入が自由化されて以降諸先輩が苦労して作ったやり方を愚直に守り続けたというだけのものに過ぎない。だから、皆さん二回りほども歳の違う僕を可愛がってくたのだと思う。

輸入の商材に良くある話だが、その販売権の移動というのは一様にドライで切ないものだ。tascoはオガタさんが初めて日本での販売を手掛けたのだが、10年ほど前のある日、Iさんから電話が来た。「オガタがtascoを止めるので処分している。アナタは双眼鏡使う人だから良かったら訪ねて幾らか買ってやってくれないか・・・」とのこと。早速、横浜関内のオガタさんの事務所を訪ねると20年も市場を開拓してきたのにあっさり輸入販売権を切られたとのこと。アチラのメーカーはクールだからより多い販売量をコミットした会社に乗り換えたのだ。日本で無名のtascoのブランドを広めたオガタさんの御苦労など全く意に介さないのだ。(記憶が定かではないが、某百貨店が権利を分捕ったように思う)

そんな事情で入手したのが、この世界にたったひとつのtascoだ。実はこれ、試作品なのである。ベースモデルは8x30の軍用モデルのようで、これをマリンユースにデザインしなおしたものだそうだ。防水仕様で軍用で当時一世を風靡していた乱反射防止の赤いコーティングの対物レンズ。結局、試作のみで量産には至らなかったそうで米国の展示会か何かで使ったものをオガタさんが持っていたのだ。頑丈で水に当てても良いのは当然、何より内部に水滴が出てカビたりしないのが嬉しい。視野は8x30なりのものだけど明るさはその辺のホームセンターで売ってるのとは比べ物にならないし中々の使い心地である。

この眺めを、誰かが「ライブカメラでも設置して配信してよ」なんて言っていたけど、ビデオカメラの類をいじったことが無い僕にはとても無理だ。それよりまあ、三脚でも買ってきてバードウォッチグで使っていたニコンの20倍のスポッティングスコープで乗船客の鼻の穴まで見てやるとしよう 笑 (2010,9,2)

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