04/09 Beken of Cows キース・ビーケン訃報

模型の塗装は乾かないし、PCが壊れて入院してしまい時間が空いた。このところ定期購読の雑誌に目を通す時間もなかったが、新着の舵5月号をめっくていると、フランク・ビーケン氏の訃報記事があった・・・そういえば先月調べごとをしていて、Beken of Cowsのホームページを見て知っていたはずなのだが、目前の雑事に追われほったらかしになっていた。

Bekenの名を知ったのは一昨年、開業の準備でポスター類や書籍を集めているころだった。優雅でクラシカルなヨットの写真、ひときわ良い値段がついていて手が出ないことで印象的だったのだ。一体、こんなに値段が違うってどんな写真家なんだろうと思って調べて納得。英国のみならず世界的にも並ぶものなき海洋写真、特にヨットの写真を100年以上に渡って撮りつづけている名門なのだ。英国王室とも繋がりが深く、ビーケンの写真集にはアン王女が前文を認めていたり、写真に撮られることを嫌ったフィリップ殿下もビーケンの出入りはいつでもどうぞということだったそうだ。

昨年の春、ちょっとした集まりで舵誌の編集局長の田久保雅巳氏とお話する機会があった。そのときオーシャンノートの立ち上げの話をすると、イの一番に”ビーケン”の名が出た。聞けば田久保さんは英国ワイト島のパーティでキース・ビーケンさんと会ったときの話をしてくれた。(このあたりは田久保さんの著書、”海からのメッセージ”67ページ世界共通語の章にも書かれている)数ヶ月たち、オーシャンノート開店。ある夜の閉店間際、ご夫婦でいらしたお客様が書籍のコーナーを見入って「ビーケンはないの?」とおっしゃる。僕は内心「エッ!ウッソー」である。こういっては何だが、横須賀の上町でビーケンの名を口にするお客様がいることが意外であった。そして驚いたことに、僕が苦心して集めたヨットの写真集の何冊かは指差しながら「これは持ってる、これも持ってる・・・」結局、エドウィン・レビックの絶版"An America's Cup Treasury"はさすがにお持ちではなく購入して下さった。しかし・・・みんな、ビーケンは欲しいんだ・・・と改めて、そのビッグネームに感心した。その後、ビーケンの写真集は現行のものは少ないものの、あの手この手で数冊、販売用のものも入手した。

詳しくはBeken of Cowsホームページをごらんいただくと良いが、初代フランク・ビーケンがワイト島・カウズに薬局を構えたのが1888年のこと。彼のベッドルームからはソレント海峡を渡る船がいつも目の前にあり、ある日、それを写真に撮ろうと思いつく。彼の写真は薬局で片手間で販売されたのだそうだが、いつしかワイト島を訪れる英国王室の方までがそれを購入するに至り、写真家としてのビーケン家が高い評価を得るようになった。息子のキース・ビーケンが仕事に参加したのは1930年代のこと、1970年に父フランク・ビーケンが他界すると薬局を止め写真に専念、フランクの孫にあたるケネス・ビーケンも写真の仕事に加わり今日に至る。そして、今年の2月、キース・ビーケンが92歳で他界した。

ビーケンのことを調べていた一昨年末、ビーケンの写真集”A Hundred Years of Sail”の古本を探していたら埼玉の本屋さんで1981年の初版が1000円!結構傷みはあるようだ。購入。ところが、届いてビックリ!表紙をめくったところにキース・ビーケンとケネス・ビーケンのサインがある!為書きがあって"Signed especially For T.Kasuya Happy Sailing!"とキース・ビーケンの字で書かれている。最後に"Cows 1983"とある。1983年にT.カスヤさんという方がワイト島のビーケンさんを訪ねたのだろうか?

もちろん、お目にかかったこともないが、こうして不思議なサイン入りの本が手元にあるので、キース・ビーケン氏の訃報、残念でならない。願わくば3代目のケネス・ビーケンさんにも、そして、次の4代目(おられるかどうか存じ上げないが)この仕事を続けて欲しいと思う。(2007、4、9)

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