8. ネルソン提督 帆船ビクトリーとラム酒

帆船ビクトリーとラム酒

先週の世界ふしぎ発見、「小国から7つの海を支配する大英帝国に生まれ変わる英国の歴史」という興味深いキャプションに魅かれて鑑賞するが、内容はヘンリー8世と王妃アン・ブーリンの愛憎劇がテーマで、後にアン・ブーリンの娘であるエリザベス(1世)が女王として大英帝国の基礎を作った云々とは解説されるものの、それが何なのかさっぱりわからなかった。それでも、ヘンリー8世が離婚してアン・ブーニンを王妃としたため離婚を禁じるローマ教会と対立してイギリス国教会が出来たのだとか、それはそれで興味深いものもあった。戦前の日本では神武天皇から始まって今上天皇まで小学生でも諳んじていたそうで、それはそれで大したものと思わなくも無いが、英国の歴史はこれまた複雑で、王室の系図なんか見てもさっぱりわからない。現代であっても、領主であるXX公と王室が入り混じって理解するには相当お勉強しなければならない。気を取り直してWikiなんぞ読みながらにわか勉強すると、そもそも大英帝国の繁栄は、それまで7つの海に君臨し英国上陸を図った130隻、3万人のスペインの無敵艦隊を1588年のアルマダの海戦で英国艦隊が破ったことで、以降、世界貿易の主導権を大英帝国が握ったことが転換点だったことがわかる。ローマからの破門と大英帝国たる宣言がヘンリー8世の時代、そして無敵艦隊からの勝利がエリザベス女王の時代となっている。

歴史は繰り返す。時は流れて2世紀後、7つの海に君臨した大英帝国も危うくなっていた。200年前に小さな軍艦の機動性で勝利したことを忘れ、官僚的な閉塞感の中で造られる大英帝国の古臭い軍艦は、常に革新的な発想をもって船を造り続けたフランスの軍艦に敵わなくなっていた。そしてナポレオンの台頭である。今年の春、たまたまヒストリーチャンネルを見ていたら、船とはお門違いの「18世紀の技術者たち」という特集の中に戦艦ビクトリーの番組を見つけた。ビクトリーを設計したトーマス・スレイド卿とビクトリーの革新的な設計の話で、これが素晴らしい内容だった。樹齢200年のオーク材、速さと機動性を保つバラスト、ジブセール、舵板の取り付け角度・・・などなど何度見ても飽きない。さて、英国上陸の先鞭をつけるべく英国に向かうフランス・スペインの連合艦隊を迎え撃ったネルソン提督率いる大英帝国艦隊、1805年、ご存知トラファルガー海戦でスレイド卿設計の革新的な機動性を持つビクトリー以下の軍艦の活躍で大勝利する。結局、最終的にはこの海戦以降、ナポレオン軍は敗北への坂を下るのだが・・・一昨日、たまに買い物に行く某ディスカウントスーパーで面白いお酒を見つけた。帆船のラベルに魅かれて手に取ったのだが・・・

レモンハートのラム酒だ。ラム酒を嗜むことは滅多にないのだが、裏の能書きを見ると面白いことが書いてある。何と、レモンハートのラム酒は18世紀末、大英帝国海軍の支給品として正式に納入された初めてのラム酒だそうである。そして・・・トラファルガーの海戦、首尾よくフランス・スペイン連合艦隊には勝ったが、狙撃によってネルソン提督を失ってしまう。ネルソン提督の亡骸は、レモンハートのラム酒に漬けられてポーツマス軍港に帰るのだが港についた時、そのラム酒は全部飲まれてしまっていたそうだ。ネルソン提督にあやかりたいとの気持ちが強かったといわれる。ちなみにこのレモンハート、漫画アクションに連載の「BARレモンハート」のタイトルのもとにもなっている。レモンハートも随分読んでいないが、練馬の大泉学園には漫画の作者、古谷三敏自身がオーナーのBARレモンハートがあるとか・・・マスターとネルソン提督の話でもしてみたいものである(2008,10,18初稿、2015年加筆)

氷川丸を見る〜横浜はスゴイ【船と港のエッセイ】 CONTENT【船と港のエッセイ】 氷川丸の積荷【船と港のエッセイ】