21. 大和のバルバスバウ

昨日は休日、夜はテレビ東京で「沈黙の戦艦」をやっていて、もうテレビでも何度も見ているのに結局最後まで見てしまった。何度見ても面白いものは面白い。今はハワイに保存係留されてる戦艦ミズーリ、実際には映画のように乗っ取られてしまうなんて可能性はゼロに等しいと分かっていても、架空戦記的な何ともいえない手前勝手なリアリティーにワクワクしてしまう。ちなみに映画の撮影はミズーリではなくてBB-60アラバマでやったのだそうだ。

架空戦記といえば、そんなジャンルの読み物を熱心に読んでいたことがあった。この手のものにはいくつかの流れがあって、ゼロ戦が改良されて第二次大戦の勝敗が逆転したり、幻の6発爆撃機「富嶽」の驚異的な活躍とかもあったと思うけれど、主流は大和・武蔵の大活躍だとか、新たに凄い戦艦を建造するといった戦艦モノが多い。まあ、史実とも重なる大和発展型の「紀伊」や「尾張」は常套だが、読み進んで旭日の艦隊あたりになると「大和武尊」やら「信長」「謙信」などといった荒唐無稽な架空艦隊が登場、さすがに苦痛になって読むのを止めてしまった。46センチ砲で飽き足らず51センチ砲がいろんなところで出てくるけれど、日本海海戦みたいな武士道的な海戦は望むべきもなかったわけで、僕は門外漢だからわかっちゃいないけれど、こっちの船もあっちの船も揺れているところに10キロも20キロの距離があったら砲弾を当てるのは神業なわけで、確かNHKの「電子立国日本の自叙伝」で聞いたのだったと思うけれど、アメリカの真空管コンピュータ、エニアックが一生懸命にやったのがこの戦艦の弾道計算だったことからも、経験とカンで46センチ砲を当てるのは難しいことだったのだから、残念ながらやはり当時の大艦巨砲は無用の長物だったのだろう。まして51センチ砲なんざ・・・である。

沈黙の戦艦からとんでもない話になったが、46センチ砲の戦艦大和といえば平賀譲卿によるバルバスバウが大発明にように言われるが、大和の船体ラインは基本的にロシア海軍のユルケビッチ型船体ラインともいわれる。ユルケビッチはフランスの客船ノルマンディーの設計者である。ユルケビッチは故国ロシアで輝かしい実績をあげていたが、ロシア革命でその立場が危ういものとなりフランスに亡命した。フランスでは細々と自動車工として生きていたといわれ、客船ノルマンディの計画が発表されると居てもたってもいられずに旧ロシア海軍の伝手を頼ってペノエ造船所の設計競技に参加、見事フランス海軍工廠を向こうに回して自案を採用させるに至る。これが洋ナシ型船首というやつで、大和もノルマンディーも船首のくびれはユルケビッチのアイデアなのだ。架空戦記ではないが、幻の巨船と言えば僕にとっては客船ノルマンディーの姉妹船である。名前は決まっていたそうで「ブリターニュ」になる予定だったとか。基本設計は出来てたいたといわれるが、図面は今日に伝わっていない。フレンチラインの場合、姉妹船というよりは一船ごとに性能を向上させてゆく船隊整備の特徴があったからノルマンディーとどの程度違っていたのか興味があるところだし、計画ではノルマンディーより大きかったらしいといわれる。図面の一枚でも発見されることを願うばかりである(2010,6,17初稿、2015年加筆)

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