09/12 三島由紀夫のAPL客船乗船記

アポロの杯

三島由紀夫の「アポロの杯」という旅行記を読む。恥ずかしながら「潮騒」くらいしかちゃんと読んだことがなく、「金閣寺」なんかは課題か何かで読まなきゃいけなかったのに完読できず、超々飛ばし読みで急場をしのいだ覚えがある。なのに何で?である。

天皇陛下が皇太子時代にご乗船されたことで知られるAPLの客船、プレジデント・ウィルソン、1951年12月、この船に三島由紀夫はハワイ経由でサンフランシスコまで乗船、横浜を出て北米、南米、欧州を回るこの世界旅行の旅行記が「アポロの杯」なのである。冒頭の始末なので何だが・・・三島由紀夫といえば、やはりブンガクの世界では輝きを放つ巨星であるからして、大いに期待した。ミシマが書いたから、プレジデント・ウィルソンが空を飛ぶとは思っちゃいなかったけれど(笑)、ブンガク的に書かれたプレジデント・ウィルソン乗船記はさも素晴らしいものだと期待したものの・・・見事に外れである。自分の乗った船が何トンで全長はどのくらいで、何ノットくらいで進んでいて・・・なんて(こっちが望んでいる)ことは一行たりとも書かれてはいない。

この「アポロの杯」、もはや現行新刊書はないので古書となる。新潮文庫のものは、驚くなかれ古書で3000円を超える。新版の三島由紀夫全集(新潮社)のうち「アポロの杯」収録のものも高価で、昭和50年頃に刊行されていた旧版の三島由紀夫全集(同じく新潮社)、全36巻のうちの第26巻を求めた。これなら1000円もしない。なかなかご立派で、昭和50年当時の定価が何と2500円也。

昭和50年頃と言えば、僕は中学生だったが、どう考えてもその頃にも、現在も、めったに見ることが出来ない旧字の活字に辟易した。前後の文脈は偏と旁の一部から、それを音読みすれば熟語が推測できたりするが、まあ、活字を見てこれだけ読めなかった経験こそ初めてである。三島由紀夫自身が、かくも旧い字体を書いていたわけでもないから、何で新潮社が昭和50年当時に旧い活字でこの全集を出版したものか想像もつかない。きっと、ブンガクにはブンガクの作法ってものがあったのだろう(笑)失敗、失敗である(2015,09,12)

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