09/13 ブレーメン号の水夫

三島由紀夫の「アポロの杯」は失敗だったが、この春に買ってとうとう通読できなかった本がいまひとつある。早川書房から出版されていた「ニューヨーカー短編集」である。米国の雑誌「ニューヨーカー」に連載されていた短編小説の翻訳である。アーウィン・ショーの「ブレーメン号の水夫」という短編が収録されており、これを読んでみたくて古書を求めたものである。

「ニューヨーカー短編集」の、読後評はあちこちにあるが、そのうちの多くを占めるネガティブな読後評に同意せざるを得なかった。全三冊の一番最初はアーウィン・ショー、常盤新平訳の「夏服を着た女たち」である。ただ、面白くなかったのならば、わざわざここに一文を認めることもない。問題は、30年ほど前、僕は講談社文庫の「夏服を着た女たち」にすっかり夢中だったのだ。

時代も変われば、嗜好も変わるだろう。でも散文も散文、何一つ結論の無い、このスケッチ的ともいえる中途半端な散文は、確かに輝いて見えたものだ。記憶の奥に蓄積されたイメージは「強い日差しの日陰で感じる無色透明のようなもの」だったはずだが、ただの「意味不明な陰鬱な散文」へと変質してしまっていた。旧き良き80年代も、黴臭い「過去」に過ぎないということだ。(笑)

肝心の「ブレーメン号の水夫」は何も得ることがなく・・・ただ人種差別とナチス問題が絡み合った船員同士の諍いを書いたに過ぎない。客船ブレーメンについて書いた部分、あるいは船員を船員として書いた内容は皆無であった。別に、わざわざブレーメンの水夫じゃなくても良いだろうし、ただオシャレな構文として「ブレーメン号の水夫」を題名としたものとしか思えなかった。

「ブレーメン号の水夫」が読みたかった故のこと、仕方がない「事故」だったかもしれないが、資料や学術・実用書は別として、本の読み直しにはくれぐれもご用心である(2015,09,14)

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