06/02 ミスティックシーポートミュージアム

ミスティックシーポートミュージアム・帆船ブルーノーズの写真:店長日記の写真:ポスター販売・Ocean-Note

この2ヶ月近く懸案になっていたミスティックシーポートミュージアムへ注文した写真が届き、無事に額装してお客様に発送させていただいた。なかなか大変で、苦労の伴ったが、やりがいのある仕事だった。

事は3月の中ごろ、横須賀の某資源調査会社にお勤めのKさんが来店したことに始まった。Kさんは某大手水産会社に永年お勤めされ、3月当時はこの横須賀の関連会社に転籍されており、この春で退職されるのだという。それこそ世界中の漁場を駆け巡った経験をお持ちで、方々の外国の現地法人の責任者の経験もお持ちで、カナダでイカの加工を現地の漁業関係者に指導に行った時に見た帆船ブルーノーズが忘れられないのだとおっしゃる。勿論、Kさんがご覧になったブルーノーズは現在の2代目だと思うのだが、初代のブルーノーズのポスターを探して欲しいと頼まれた。ブルーノーズはカナダのコインや切手にも描かれる伝説のスクーナーで1921年進水、1シーズンのみタラ漁に使われ、以降17年間に渡りアメリカを向こうに回して帆船レースで無敗を誇った船だ。残念ながら売却され1946年に座礁沈没している。2本マストのスクーナーはアメリカの独壇場で、1851年に英国から後のアメリカスカップを奪ってきたのもスクーナー”アメリカ”、複雑に入り組んだアメリカ北東部の沿岸で切り上がり良く高速を出せるように発達した独特のもので、当時、このパイロットスクーナーと呼ばれた船の名声は英国まで聞こえ、それがワイト島のヨットレースに招かれたというわけだ。カナダも負けてはいない。アメリカのスクーナーを負かす船が欲しくてその高速を買われてレースに出たのがブルーノーズだ。もと漁船であることはデッキが平らなことで分かる。レース艇はバウやスターンに行くに従いデッキがせり上がっている。

さて、頼まれたは良いが、探しても探しても見つからない。そこで、ブルーノーズの写真を持っている、コネチカット州にある全米最大の海事博物館、ミスティックシーポートミュージアムを当ってみる。ここに写真家モーリス・ローゼンフェルドが撮ったブルーノーズの写真がある事自体はローゼンフェルドの写真集を販売しているから知っている。ポスターでは製作・販売されていないことも分かっている。そうなると・・・アーカイブネガからの写真しかない。Kさんに希望のサイズを聞くと大きいものが欲しいとのこと。可能なのは20x16インチの印画紙に焼いてもらうこととなる。数万円もするのだが・・・Kさんは注文して欲しいとおっしゃる。いよいよ、ここからが大変だった。公開されているアーカイブから首尾よくブルーノーズの写真を選び、メールでは注文を受け付けてくれないのでFaxでオーダー。さて、一安心と思ったら・・・何と注文した写真を焼き付けてみたら出来が悪く(ネガの傷みだろう。何せ1930年代のネガだ)、責任者から待ったがかかったという。「他のものにはならないか?」と聞いてくる。ありえない!「ブルーノーズしか要らない」といったら、数回のやり取りのあと、「アーカイブからブルーノーズを探す」と言ってくれた。探すと言っても・・・これは本当にご苦労なのだが、ミスティックに保存されているローゼンフェルドコレクションのネガは100万枚を越える。2週間後、2枚の候補を連絡してきた。Kさんとかんかんがくがくやって、そのうちの一枚、非公開のネガ#90392Fを選んだ。やれやれ・・・と思ったら、今度は「縦位置にするか横位置にするか?」と聞いてくる。Kさんに希望を聞くとそのどちらでもなく、ネガを20x16インチに全景焼いて欲しいという。horaizonだのberticalだのとやりとりにメールが数回。あちらも博物館で、半ばアーティストだから主張が強い。果ては、「出来ない」とか言われながらも食い下がって、こちらの希望通りに焼いてもらった。この間、最初から最後まで50回近くのメールのやりとり。すっかりKimとも仲良しになってしまった。(あちらはそう思っていないかもしれない・・・苦笑)

今度は額装だ。何せ、1936年撮影のネガからのオリジナルプリント、それこそ博物館級の写真である。普段はオフセットのポスターが中心だからオーバーマット(ポスターの表側に窓抜きのマット被せる)のみとしているが、今回は正調ブックマット。無酸性紙のオーバーマットとバックマットで額装する。バックマットに無酸性紙のコーナーで写真を止める。コーナーは無酸性紙のテープで補強止めする。写真にはテープは触れない。オーバーマットは作法に倣いバックマットにヒンジ止め、すなわちブックマットとする。ホコリが入らないように注意深くガラスを被せる。ガラスとオーバーマット、バックマットをそろえ、空気が出入りしないように四方向のエッジを無酸性紙テープでふさぐ。額装したら最後は額縁の裏側のバックボードと額縁を四方向、水貼りテープで塞ぎ止める。これで、飾る場所さえ気を付けてもらえば20年位は保つだろう。写真は本当は飾るのが無理な物質で、本来は飾らずに保管するのが良い。それを飾るには上記のような作業が必要だ。欲張ればUVカットアクリルを使うところだが、これはKさんと相談の上止めた。アクリルの傷や静電気によるホコリの吸い付きは、それはそれで厄介だからだ。

残念ながら、アメリカはシカゴ止まりで、僕はまだニューヨークさえ行った事がない。港町としてのニューヨークに店を構えるのも夢だし、ミスティックやニュージャージーのマリナーズミュージアムも訪れてみたいものと願って止まない。こうして苦労してミステイックと取引をすると情熱はメラメラと燃えてくるのだが・・・このところ東京に行くことさえ少なく、すっかり横須賀の人になってしまい・・・すっかり出不精になってきてしまった。用心用心(2008,6,2)

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