3. 氷川丸物語(かまくら春秋社)

かまくら春秋社・氷川丸物語

ひょんなことから、この「氷川丸物語」を売っている。この本を売っているのは神田の書泉、横浜有隣堂とオーシャンノートの三店だけで、一般書店への流通は停止している。もう流通コードをとるほどの部数も無く、かつ美本は無いからなのだ。(追記:販売終了。かまくら春秋社の本書在庫が無くなったことによりかまくら春秋社との取引は終了しております)

たまたま知り合った氷川丸物語の出版元、かまくら春秋社のS君(横須賀在住)が教えてくれたのが事の始まり。一冊貸してくれたので読んでみると、これは凄い本である。日本の客船史、海運史の一部を支える資料的な価値を持つ労作である。特に戦中の氷川丸の著述に詳しく、これは郵船博物館でもここまで詳細な記録やエピソードは見ることはできないだろう。ご存知の通り、氷川丸は廃船解体を免れ、横浜山下公園に保存されている。その所為で、日本の客船の中でも様々な話題の事欠かないわけだが、その話題のネタ元の大部分はこの氷川丸物語・・・らしいのだ。「これ、ウチで売れんだろうか?」とS君に訊くと、「倉庫で探してみます」と来た。S君、三崎にある倉庫で頑張って探してくれて、このデッドストック品を当店で販売することにした。昭和53年初版のそのものである。流石に未読で帯付きではあっても、経年変化のヤケとカバージャケットの痛みは多少あるものの、これはさすがに売れて、この3ケ月は書泉の3倍くらい売ってしまった。

氷川丸は昨年から、氷川丸マリンタワー株式会社の解散を受けて、その先行きが危ぶまれていた。詳しい事情はわからないが、結局、日本郵船が再度整備して、2008年の春の再公開が決定した。僕は、横須賀の浦賀の再開発の話の中で、氷川丸を持ってきたら良いと思っていて、昨年の春、たまたまお近づきになった舵社の田久保氏に話したことがある。田久保さんは浦賀再開発コンサルの三菱地所から相談を受けるお立場なのだが、その話は実は検討済だったそうで、氷川丸は法律上「船」ではないために動かせないのだそうだ。氷川丸再整備再公開を受けてかまくら春秋社では氷川丸物語の再販を検討したそうなのだが、著者の高橋茂さんはすでに亡くなられており、版権の相続問題が複雑で断念したとのことである。

しかし、船の保存は大変なもののようだ。今度、西海岸に行くチャンスがあったらクイーン・メリーを見てみたいものだ。これは客船の保存のお手本だそうだ(2007,5,25初稿、2015年加筆)

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