20. クイーンメリー2の図面

クイーンメリー2の一般配置図

来る2月19日、クイーンメリー2、二度目の来航である。丁度ドンピシャのタイミングで世にも珍しいクイーンメリー2の一般配置図を入手した。キュナードのパンフレットを見れば、デッキプランは普通に見ることができるが、どういう事情で入手されたのかは知らないが、客船の紙モノのコレクションでは世界的にも知られる神奈川県在住のFさんが、クイーンメリー2の一般配置図(外国ではジェネラル・アレンジメント=G.A.という)を数枚入手された。昨年、県下平塚郵便局で展示されて新聞でも話題になったのだが、この日本に数枚輸入された「青焼き」の一般配置図を譲っていただいたのである。大変貴重な資料であることは確かだし、例えば模型作りのまたとない資料など有意義な活用の一助にもなりえるので複製できないかという話が出て、さすがこのあたりが横須賀なのだが、自動車の原寸図面の出力などもやっている専門家にあたって複製を製作してもらった。何せ幅840mm、長さ2480mm、サイズにすれば2A0半(ニエーゼロハン)、専門家でもちょっとした大仕事だったようだ。結果的には職人技で複製に成功はしたが、「原本の青焼き」が本物ではないため、極薄い「トレーシングペーパーの第二原図」を起こさざるを得ず、その第二原図を元に作る「複製の青焼き」は30枚しか製作できなかった。

今は昔と違って、設計製図はCADでやる。そして出力はプロッターによって通常の白色紙になされる。昔は大判PPCコピーの品質が悪く、建築図面では起端と終端で誤差が大きくて使えないことも多く、そもそもPPCが普及する以前は図面出力の手段が無いわけで、図面はトレーシングペーパーに描かれてから青写真やジアゾ青焼きで出力されるのが普通だった。ということは数枚だけ輸入された青焼きのクイーンメリー2一般配置図は何物なんだろう?と、今回の第二原図製作と複製をやってくださった専門家とも検討してみた。図面の精度から見て、どうやら造船所でプロッター出力された白図を何者かが持ち出して、その本物の白図から第二原図を製作、その第二原図を焼いたものが日本に数枚輸入された青焼きだとの結論を得た。そこで、整理とチェックがてら手持ちのクイーンメリー2映像を見ていたら・・・あった、ありました! フランスで製作されたビデオ「THE NEW QUEEN OF THE SEA」は、設計者のステファン・ペインがフューチャーされた珠玉のドキュメンタリーフィルムだが、その中に本物の一般配置図が出てくる。上の写真だが、一枚目の折り目があるものはペイン自身が机に広げているところ、二枚目はプロッターで出力されるところだ。そして、その一般配置図は下の三枚の写真のように設計室の壁に貼られたり、打ち合わせに使用されている。

普通の人には用のないものだが、複製とはいっても2A0半にも及ぶ名船の図面だ、見ているだけで何とも言えないロマンチックな気分になる。もちろん、スクラッチの模型作り資料には欠かせない。一般配置図だから船体の断面形状などはわからないが、船全体の配置がわかっていないと模型は作れない。現に、現在、千葉県某所で1/200のクイーンメリー2を制作されている方がおられ、人を介して本図をお渡ししたところ大変に喜ばれた。今回の図面については、長いことインテリア業界で建築に関わり、なおかつトレペに鉛筆、ジアゾ青焼き時代を経験していることが大いに役に立った(2010,1,31初稿、2015年加筆)

Cunard Queensの船内消印ラストカバー【船と港のエッセイ】 CONTENT【船と港のエッセイ】 【船と港のエッセイ】

ページトップへ